正解はある!
前回の続き
前回の記事では指導者交流会の内容をお伝えしました。
今回はこの続きです。
最後にやったディスカッションで各グループがそれぞれの答えを発表しましたが、僕にとってはその内容はどうでもいいものでした。
その理由としては、「何が正解か?」ではなく「正解とは何か?」ということを参加メンバーに伝えたかったからです。
正解は2つある
結論から言うと、「正解とは何か?」の答えは、ラクロスの現場においては2つしかないと思っています。
それは
・ラクロスの正解
・チームの正解
です。
これはラクロスに限らず、どのスポーツでも同じだと思います。
サッカーならサッカーの、バスケならバスケの正解があるし、それとは別にチームの正解が必ずあります。
特徴としては、ラクロスの正解は無限です。逆にチームの正解はかなり限られています。
例えば、日本代表経験者やトップチームの選手達が行っているクリニックは「ラクロスの正解」を教えてくれています。逆に指導者が教えなければいけない(導いてあげなければいけない)のは「チームの正解」です。
交流会ではまさにこの「チームの正解」を作るためのディスカッションを4人1組のグループで行いました。このグループ1つ1つがチームだとすると、ラクロスの様々なシチュエーション(局面)において、チームとしてどのように行動するべきかを決めたわけです。
僕はこの「チームの正解を決める」ことはとても大事なことだと思っています。
過去記事で「大事だ!重要だ!」と僕が思っていることを色々紹介してきましたが、今のところコーチとして最も重要だと思う第1位はこの「チームの正解を決める」です。
少し話がそれますが、
僕はコーチとして「チームが勝つ」ために指導をしているので、それを目指さない指導とはそもそもスタンス(指導の軸)が違います。
コーチをやっている方なら共感いただけると思うのですが、コーチとして指導するとなったら軸を設定すると思います。例えば、新人育成のための指導、将来のための指導、昇格のための指導、日本代表になるための個人指導…などなど、人ぞれぞれ軸(スタンス)が異なります。なので、チームの正解を決めるということに関して反論する人も多いと思います。(僕としては逆に反論意見を聞きたいです。別に論破する気もないですし、たくさんの意見を聞くことが糧になるので)
また、チームを見るのか、個人を見るのかという議論もあると思いますが、僕は「チーム」を見ます。その上で「チームが勝つための指導」というのが僕の今のスタンスです。
なので、そのスタンスにおいてはチームの正解を決めるという指導は僕にとって最も重要な指導軸です。
なぜチームの正解を決めなければいけないのか?
チームの正解を決める理由は、単純にわかりやすくなるからです。それは指導するコーチも実際にプレーする選手も、です。
例を挙げます。
超極端ですが、
「1ON1を起点に外からのランシューメインで点を取る」
とチームの正解を決めたとします。
すると、試合ではチームの正解が「1ON1→ランシュー」なので、「1ON1後にゴール前へのパス」はほぼないと判断できて「チェイス」もしっかりとれます。
もしこの正解が決まっていないと、1ON1してランシューしたら、ゴール裏にいた味方が中パスを受けるためにクリース前に飛び込んでいてチェイスを取り損ねた。…みたいな連携のとれていないプレーを招きます。※超極端な例です
また、練習のことを考えれば、チームの正解が「1ON1→ランシュー」のように明確だと、「ランシュー力」「1ON1力」「個々の1ON1を活かすための動きの理解」を軸に練習を組み立てることができます。その結果練習メニューも「こなし」にならなくなります。
ちなみに、ほとんど全ての大学が同じような練習メニューをやっていますが、それはチームの正解が明確ではないからです。チームの正解が決まっていればもっとオリジナルの練習メニューが生まれるし、ありきたりなメニューでも意識ポイントが全く違う意味のある練習ができます。
さらにさらに、教える側としてもこれはメリットになります。
「チームの正解がこれだから今のプレーは良くない!」
「チームの正解がこれと決めたので、結果的にはミスったけどOK!」
と、良いプレーと悪いプレーの区別がはっきりとわかるので、選手達に納得のいく説明をすることができます。
ちなみにこれができないと以下のようなことが起きます。
(例)
ゴーリーがセーブ
↓
ブレイクを狙ってMFの選手が素早く前に飛び出す
↓
ゴーリーは横にいるDFにパスを出す
↓
「いい飛び出しをしたのになぜパスを出さないんだ?」とMFの選手がキレる
↓
「リスク回避のために安全なパスをした」とゴーリーの選手もキレる
↓
どっちの意見も間違っていないので困る
↓
何となくうやむやになって「次同じ場面でパス出せそうなら出そう」というフワッとした反省で終わり、結局2人とも忘れて意識しなくなる
もしこのとき、チームの正解を「ブレイクをめちゃめちゃ狙う」と決めていたならゴーリーは多少リスクをおかしてでもMFにパスを投げなければいけません。そして、仮にミスったとしてもお咎めなしです。チームで決めた正解なので。
このように、チームの正解を決めることは、ムダな争いを無くし、わかりやすさを高めます。わかりやすさはイコールすると「納得感」です。
先輩やコーチから「今のプレーはダメだ」と言われたとしても「それがチームで決めた正解だから」と言われれば納得します。その納得感があればチームはまとまります。そして、チームの正解として選択されたプレーはよりいっそう「洗練」されます。それがチームの武器にもなるのです。
「中途半端な武器をたくさん持ったチームより、洗練された数少ない武器を持つチームのほうが魅力的」というのが僕の美学でもあります。
※ちなみに、何度も言いますがここで挙げた例は極端な例です。僕が実際に指導するときはもっと細かい条件付きのチームの正解を決めるようにしています。
ラクロスの正解を教えるのはツライ
「チームの正解」については熱く語れたので、「ラクロスの正解」についても触れたいと思います。
ラクロスの正解は無限です。
無限だからこそたくさんの意見が生まれるので、現役の時に仲間達とあーでもないこーでもないとラクロスの正解について議論するのはとても楽しかった思い出があります。
でも、コーチとなった今はラクロスの正解よりもチーム作りやチームに実践させていることを議論したいです。
そんな思いを抱えながらこれまでたくさんのコーチ達とラクロス談義をしてきましたが、やっぱりコーチになってもラクロスの正解を熱く語る人が多いんですよね。(そういう議論はとても好きなので楽しいのですが、正直ちょっと物足りない。。)
僕が聞きたいのは、それを伝える意図とか浸透させるための方法とかそれをどのようにゲームに生かしていくのかということで、詰まるところ、
「どんなチームを作ってるの?」
ということなんです。
結局のところ、ラクロスの正解って状況次第でいくらでもあるんで、教えるのがとても難しいんですよね。なにより浸透させるのがとても難しい。
僕のミッションはあくまで「大学チームを強くする」ということなので、どんなに有望な選手がいても、その選手を見れるのは4年間だけです。
だから他のコーチが、
「どんな正解を選んで」
「どんなアプローチで」
指導しているのかが知りたいんです。
ちなみに、噂で聞いた話ですが、全国には100ページくらいのマニュアルみたいなものを作って、パターン別の対策をまとめたり、「今のはAのパターンだからブツブツブツ…」「今のはBのパターンでいけるからブツブツブツ…」と、似たような場面で色んなパターンの考えを伝えて浸透させているコーチもいると聞きました。
それスゴくないですか!?
めっちゃ頭脳派!どんなマニュアルか見てみたいです。
と言いつつ、僕が選手ならそんな指導はツライって思っちゃうんですが。笑
僕が現役だったとしても、4年間で全部覚えて実践できる自信がありません。。頭脳派集団ならいいと思いますが、みんながみんなメンサ会員ではないので。
ここまで考えると、ラクロスの正解を詰め込む指導法は「広大な森を作る」ような作業と言えます。逆にチームの正解を決めて取り組む指導法は「1本の太くて強いデカイ木を作る」ような作業と言えます。
どちらも大事ではありますが、僕はやっぱりわかりやすいほうがいいですね!
チームの正解のその先
最後に、僕はチームの正解はラクロスの正解を凌駕する可能性があると信じています。その可能性を感じる場面は現役時代にもあったし、コーチをしている今もたまに見ることがあります。
それは「以心伝心プレー」です。
(ホントはもっとセンスの良い言葉を使いたいのですが、イマイチしっくりくる言葉がなくて、結局オレンジレンジ風になってしまいました。。)
これがどういうプレーかと言うと、アイコンタクトを超える意思疎通プレーです。仲間の動きがよくわかり、カラダを見ただけでその後のプレーがわかる。すると、オフボールの動きが格段に良くなり、チームプレーのスピードが飛躍的に上がる。それにより、最高の連動とタイミングでDFがパスカットしたり、ダブルで落としたり、そこしかないというタイミングでパスが通ったり…
そんな「ハイレベルなチームプレー」です。
この連動については共感してくれる人が多いのではないでしょうか?
これらのプレーは、僕の考えでは「チームの正解をチーム全員が高いレベルで理解し連動」したときに起こるものだと考えています。
まさにチームスポーツ最大の醍醐味だと思います。
この連動が決まったときはプレーをしていても見ていても非常に興奮します。
ちなみに僕が理想とする最高のチームプレーの形
↓↓↓
これを見たときの衝撃は忘れられません。
こんなチームプレーができるラクロスチームを育てたいですね!