チームを分析してみた
絶賛お悩み中…
こんにちは、岩手大HCの佐藤陽一です。
今回は「日本の大学チームを分析」というテーマでお話ししたいと思います。
それにしても他チームを分析するとは偉そうなタイトルですねw
僕がなぜこの分析をやろうと思ったかと言うと、シンプルに
指導に悩んでいるから
です。
特に悩んでいるのは
コーチとしてのスタンス
ですね。
この悩みをなんとか解消すべく、この悩みに向き合い、細かく事象を洗い出し、抽象化して、その結果指導しているチームの強化に生かしていければいいなぁという思いでやっています。
とりあえず「言語化」してみて分析やってみようということです。(言語化、抽象化は最近の僕のテーマです)
大学チームは大きく分けて3種類
結論から言うと、僕が分析した感じだと今の大学チームは3種類に分けられると思っています。
それが以下の3つです。
①危機感型
②インテリジェンス型
③クリエイティビティ型
この分類は「チームビルディング」の特徴ごとに分けています。
つまり、「チームを作るうえで影響力の強いものは何なのか?」ということです。
では、それぞれについて僕の考えを説明したいと思います。
①危機感型
まずこの危機感型ですが、これはどういうことかと言うと、
チーム内で「強くならなければいけない」「勝たなければいけない」という危機感があり、その危機感に打ち勝とうと努力してチームを作っていくタイプ
ということです。
上記の図はWill、Can、Mustのフレームワークとして使われる図を僕なりに解釈して少し変えたものです。
おそらくWill、Can、Mustと言えばビジネス研修的によく登場するものなのでご存知の方も多いと思うのですが、そこで登場するのは3つの円が重なるタイプのものだと思います。ただ、それだと思考の順序がうまく表せないので上の図で説明したいと思います。
まず、この図がどういうことを表しているのかと言うと、
・チームの目標や意志、やりたいことが「Will」
・できることが「Can」
・やらなければいけないことが「Must」
で、
その上でチームビルディングとは「Will」を目指す作業である。
ということです。
これを踏まえると、危機感型のチームは「勝たなければいけない」という危機感の「Must」から思考がスタートします。そして、勝つための練習をしなければならないという「努力Must練」をひたすら繰り返し、そこからできること(Can)がいくつか生まれます。そしてそのできることをもとにしてチームの共有意識(Will)ができあがっていくというチームビルディングです。思考の順序としては以下の図のような感じですね。
もう大体想像つくかと思いますが、この危機感型の最たるチームは早稲田大学です。
早稲田の強さを示す『15』
『15』
この数字は早稲田の強さ、そして危機感を煽るひとつの記録です。
この数字の意味がわかる方は熱烈な早稲田OBくらいかもしれません。
これは
15年
を表しています。
この15年というのは早稲田が関東リーグ戦においてFINAL4(準決勝)に進出し続けている年数です。
そう、早稲田は2005年から現在にいたるまでの15年間、FINAL4進出を一度も逃していないんです。
これはどの大学も成し得ていない、今も継続中の記録です。
これを知って
「なんだそんなことか」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、これは相当すごい数字です!
何がすごいのかと言うと、
毎年メンバーが大きく変わる大学チームにおいて、安定して日本上位の好成績を残し続けている
ところです。
これはどの大学にもあることですが、
「この代はポテンシャルがすごい世代、この世代は実力的に弱い世代…」
みたいな感じで、チームとしての初期能力値は良い時もあれば悪い時もあるのが普通です。早稲田だって同じです。
実際、僕の世代(2009年卒)は代表選手も少なく「谷間の世代」なんて呼ばれたりもしました。でもFINAL4を逃していません。
この浮き沈みあるのが普通の大学チームにおいて、安定してトップクラスの成績を残し続けている。
ということは、この危機感はとんでもないということです。
もしFINAL4を逃そうものならその世代は何を言われるか…(怖すぎます)
誤解を恐れず言うと、早稲田は「ラクロスをすることが苦しい」と思っている人が多いのではないでしょうか?
ちなみに僕は苦しかったです。そして、試合で勝つとその苦しさから解放される喜びと安堵に変わります。これが良いかどうかはわかりません。どちらかというとちょっとネガティブな感じはします。しかし、この危機感だらけの早稲田ラクロスに勝てないチームがほとんどです。そしてOBとしては早稲田の勝利は最高のエンタメなので強い早稲田を維持してもらいたいという思いもあります。
現在の部員の危機感を思うと「そういう強さでいいのか?」と思う部分もあり複雑な心境ですが、今の大学ラクロスのトップチームは「危機感を糧にして強い」ということだけは間違いありません。
②インテリジェンス型
続いて第2の型「インテリジェンス型」です。これはどういうことかと言うと、
徹底した論理思考による自己マネジメント&チームマネジメントでチームを作っていくタイプ
です。
つまり思考力の優れたチームです。
先ほどの図を使うと、このインテリジェンス型のチームは強烈な「Will」があり、それをもとにできること(Can)やしなければいけないこと(Must)を効率的に行っています。
なのでチームビルディングの思考順序としては下のような感じです。
このインテリジェンス型のチームとしては東大や武蔵大といったところでしょうか。
特に武蔵大は近年大注目のチームで非常に面白いです!
(武蔵大HCの長妻くんには今度この場で語ってもらいます笑)
多分地方のチームは武蔵大のチームマネジメントやチームビルディングはめちゃめちゃ参考になるはずです。
③クリエイティビティ型
続いて第3の型「クリエイティビティ型」です。これはどういうことかと言うと、
独自の発想や奇抜な取り組みでチームを作っていくタイプ
です。
この型のチームビルディングの思考順序としてはインテリジェンス型と変わりません。
しかし、インテリジェンス型と違うのは「Will」がコーチの影響力を強く受けている場合が多く、インテリジェンス型よりも自己マネジメント力が弱いです。つまり、部員達自身の思考力が弱いということです。
岩手大はまさにこの型です。
自分で言うのもなんですが、僕のチーム内での影響力・発言力は相当に強いと認識しています。この影響力の強さは、僕の考え方や発言がそれまでのチームにはないものだからこそだと思います。(それが例え関東の強豪校の真似事だとしても、そのチームにとっては新しい発想なわけで、その目新しさがコーチの影響力を高めるのです)
尚且つそれで結果が出てしまったことも大きいかもしれません。
少なくとも岩手大の現在の成績は10年前では到底考えられないレベルでした。ちょっとでも成績が良くなれば結果が出たとして称えられやすくなります。
というわけで、部員たちにとって目新しいことを提案するコーチの影響力を強く受けたチームビルディングがこのクリエイティビティ型です。
どの型にも属さないチーム
ここまで3つの型について説明しましたが、僕の感覚だと
全国のチームの大半がどの型にも属していません。
特に地方チームほどそうです。
危機感もなく、考える集団でもなく、新しい発想もない。
このようなチームはコーチがいないことが多く、いたとしても影響力が強くありません。
結局のところ、②や③のような型はコーチがいないとなかなか生まれないんです。学生たちだけで考えて浸透させられるチームは稀です。考えるきっかけはコーチが与えてあげなければいけません。
ただ①の危機感は特殊です。コーチがいなくても学生が主体的になります。というか追い込まれることで主体的に行動しなければいけなくなるという表現の方が正しいかもしれません。
結局どの型がいいの?
競技としての結果だけ見れば、最も良い成績を残しているのは①危機感型です。その次が②インテリジェンス型ですかね。この共通点としては、どちらも
学生が「主体的に」行動している
というところだと思います。
これ、言うのは簡単なのですが、実際やるとなったら正直かなり難しいです。
これがもし「個人だけに特化して主体的に行動させる」だけの指導なら少しは楽かもしれません。しかし、ラクロスはチームスポーツです。個人を主体的に行動させるだけでなく、それをチームに高いレベルで浸透させなければいけません。言ってしまえば、「監督やコーチがいなくても回るチーム」を作らなければいけません。
僕が悩んでいるのはまさにここです。
これだけ考えれば①危機感型か②インテリジェンス型のチームを作るのが望ましい気がします。(危機感型は自分の経験上作りたくはないですが…)
でも、それはそれでなんかつまらない笑
監督やコーチがいなくても回るチームができたら僕の存在意義とかやりがいが薄れるなと。。(ワガママですかねw)
本当に強いチームにしたければ学生の主体性を引き出すのでいいと思います。
でも、僕の主体性が失われる気もします。
今はこんな葛藤を抱えています。
僕自身自己分析が必要なのかもしれません。笑
いったい自分は何がしたいのか?
僕自身のWillをはっきりさせないといけないですね。