なぜ大学スポーツは4年生が一番成長するのか?
「最後の年だから」ではない
こんにちは、岩手大学HCの佐藤陽一です。
今回は「なぜ4年生が一番伸びるのか?」という内容でお話ししたいと思います。
僕は15年ほどラクロスに関わり続けていますが、その経験から思うのは、
大学4年の年に一番伸びる選手が多い
ということです。
僕は「最後の年だから頑張って上手くなっているのだ」と思っていましたが、最近は考え方が変わって別の理由があると思うようになりました。
この理由について、今回は結論を最初には出さず、少し遠回りしてから最後に結論とそのためにやるべきこと、みたいな形でまとめてみたいと思います。
最初は全然別の話をしますが、最後にはちゃんとタイトルの結論に戻ってきますので、どうか長文にお付き合いいただければと思います。。
指導方法の転換が迫られている
前回の記事のとおり、これからは僕自身の指導方法を変えるチャレンジをしようと思っています。
www.lacrosse-coaching.com
具体的に言うと、
「監督やコーチがいなくても回るチームを作ろう」
というチャレンジですね。
これまでの岩手大は僕がガンガン口出して考えて影響を与えまくってきました。もちろんそれでもそこそこに結果は出ましたが、今のやり方では現在の位置が限界だと感じています。やるからにはもっともっとすごい結果を出したい。
あとは何より変化がないと全く面白くないという思いが根底にあります。変化がないということは成績は絶対に変わりません。そして同じことをやっていればほぼ100%成績は悪くなります。同じことをやって上手くいくなんてことは絶対にありえません。これ多分スポーツに限らずです。
とは言え、岩手大は毎年変化させてなかったわけではありません。毎年何かしらの変化をチームには与えてきました。ただそれはチームに対してあててただけで、今年はその変化を自分自身にあててみよう。
というのが今回のチャレンジになります。
変化は怖くない、怖いのは…
僕は自分のやり方が変わることに対してのプライドは全くありません。もちろんそれなりに軸を持っていますが、その軸自体が実験思考なので、「新しいこと」「奇抜なこと」が大好きです。なので今回も迷わず変化させることができると思います。ただ、怖いのは自分の変化ではなく、部員達が良い方向に変化してくれるかどうかです。
このブログは部員達も見ているし、実際に口頭で説明もしているので「今年は部員の主体性を重視したチーム作りになる」というのは部員達自身もわかっています。
問題は、それによって変な方向に考え始める部員が必ず出てきてしまうということです。
考えられる最悪の流れは、
部員達に任せる
↓
コーチに頼らない。コーチの意見は聞かない。
↓
中身スカスカのチーム作りをして大敗
という流れ。
ここが大事なんですが、
「部員達に任せる」というのは「放任・放置する」という意味ではないということです。
しかし、これだけ聞くと部員達の中には
「部員の主体性重視=コーチの意見は聞かない」
という思考になってしまう人もいます。
これでは「自由をはき違えた無法地帯」です。
この無法地帯のまま
短期間(リーグ戦が始まるまでの数か月)でチームがまとまることはありません。
仮に途中でこの思考のミスに気づいても時すでに遅しです。
というわけで、チームが無法地帯にならないようにするための
ルール
が必要なわけです。
思考プロセス(考え方)に対してコーチングする
部員主体をはき違えた無法地帯をつくらないためにはルールが必要です。
そのルールは
部員達の思考プロセスに対してコーチがうるさく言う
というものです。
どういうことかと言うと、
例えば、
部員「これから近距離のシュート練習を増やします」
コーチ「それはなぜ?」
部員「近距離のシュートの決定率がなんとなく悪いなと思ったからです」
コーチ「どれくらい悪いの?」
部員「この前の練習試合で結構外す場面が多かったので」
という会話があったとします。
このとき、僕が部員に対して詰めるポイントは2つです。
①「どれくらい悪いのか?」という質問に対しての回答がずれている
②この内容では説得力がないので近距離シュート練習はやらなくていい
まず①は部員達と話していると結構な頻度で起きるのですが、質問に対する回答になっていないというものです。この場合、「どれくらい悪いの?」というHowに対して「~なので」というWhyの回答をしています。これは理由が弱くてごまかし感情が出たときに起こりがちです。
というわけで、質問に対して答えをずらさないようにうるさく注意します。
そして②が核心です。
この内容では圧倒的に説得力に欠けます。ポイントは部員の「なんとなく」というセリフです。この言葉が出るということは深く考えられていないということです。
このような「思考の甘さ」は激烈に注意しなければいけません。
この例から僕が伝えたいのは、
「行動に対して説得力を持った説明ができる部員を育てること」
であり、
それを抽象化すると、
部員が実行するまでの「思考プロセス」に対して指導する
ということです。
これが僕の考える部員主体チームを作るためのルールです。
なぜ説得力が必要か?
とは言え、これだけ見ると会社みたいですね。上司が部下に激ヅメしているのと大差ないかもしれません笑
「なんで?」と聞くと聞かれた側はだいたい嫌な気分になります。
でもこのあまりいい印象を与えない「ツメ」ですが、部員一人一人には説得力のある説明ができる人物になってもらわないといけません。
なぜなら、説得力こそがチームに大きな影響力を与えるからです。
ちなみにこの説得力とは、コーチの決裁をとるための説得力ではなく、
部員が部員を納得させるための説得力
です。
上司の決裁をとるために部下が説得する会社のお仕事とはこの部分が違います。
先ほどの例では部員からコーチに対しての説明場面でしたが、実際にその練習メニューをするときは「部員から部員」に対して説明をした上でチーム全体で実行します。
つまり、説得力がない説明の練習メニューではチーム全員が納得してその練習に取り組めないんです。そうなってはその練習をやる意味がありません。
部員主体でチームを作るということは
部員自身が他の部員に影響を与える力を持って初めて実行できる
というのが大事なポイントです。
だからこそ部員主体のチームを作りたいコーチは、部員の思考力、特に思考プロセスについて注意深く見てあげることが大事なんじゃないかと思います。
※ちなみにこのあたりの話をさせるなら武蔵大HC長妻くんがバツグンです。
説得力を持たせるために
説得力を持ってチームに影響を与えるようになるためには、
①まずは論理的に説明できるようにすること
②数字で表すこと
③結果を出すこと
の3ステップです。
①は簡単で、理由を説明できるようにすることです。
「〇〇だからこれをやります!」
「これをやります!理由は〇〇だからです!」
と説明できればいいだけです。
②は、上記の①の理由を可能な限り数字(データ)で示すことです。
例えば
「前回の試合で〇〇の回数は〇回で、そこでできたのは〇回。だから〇%と低い」
みたいな感じで数字で言われれば大体説得力は持たせられます。
③がちょっと大変です。
①②を通して実行したものでキッチリ成果を出すことです。
これにより信用度が上がります。
当たり前ですが、実績結果に勝る影響力はありません。
じゃあ部員主体のチームを作ろうと思ったら…
ここまでの話は僕の勝手な指導論です。これだけ聞かされても「はいそうですか」でしかないと思います。
というわけで、実際にこの内容をもとに早速部員達に対してやってみたお話をしたいと思います。
さて、
「これからは部員の行動を起こすまでのプロセスに対して指導するぞ!」
と頭を切り替えることができた僕は、早速部員達の行動をチェックしていました。
すると根本的なことに気づいてしまいました。
そもそも、
部員達にWillがない
んです。
つまり、「こうしたい」「こんなチームを作りたい」「自分はこう思う」という主張が全然ないんです。。
チームの前に「個人」に主体性がなかったw
言われたことをただやり続けているロボット集団だったんです。。
(特に下級生ほどその傾向が強かった)
言われたことに従えばいいとやってきた習慣がなかなか根深いことを知りました。
というわけで、考えていた方針を一旦ストップして遠回りすることを決めました。
その遠回り第1弾として僕が部員達に課したのは「エムグラム」です。
エムグラムやってみた
エムグラムとは性格診断ツールです。
これをやろうと思ったのは、
個人に主体性がないのは、もしかしたらそもそも「自分がどういう人間か?」ということをわかっていない部員が多いのでは?
診断結果は?
突き抜けない性格=自分に自信がない=自分を知らない
4年生が一番伸びる理由