【戦術考察】サッカー戦術は進化した。ラクロス戦術は?
ラクロス戦術はもっともっと進化する
よく聞くラクロスの特徴
「ラクロスは攻守の入れ替えが激しい」
「長いスティックを持った選手がDFです」
「選手はどんどん交代します」
先日、岩手大学ラクロス部がテレビの取材を受けました。これらはラクロスの特徴を聞かれた際に回答した内容です。
上記のような回答はラクロスをやっている人なら一度は答えたことがあると思います。
そして、その内容からもわかるように、
ラクロス(男子)の一番の特徴といえば、
ポジションが分かれていて、ポジションによって扱う道具が違う
ということだと思います。
ラクロスのポジション
ポジションによって扱う道具が違うということは、つまり
ポジションごとの役割
がはっきりと区別されているとも言えます。
このラクロスのポジションごとの役割はポジションの名前にも表れています。
例えばLMFなんかはロングスティックを持ったMFという名前そのままのポジションです。
ちなみに僕が現役の頃は
AT、MF、DF、LMF、FO、G
くらいしか分けられていませんでしたが、
今では
DMF(ShortのDF専門プレーヤー)
とかは当たり前になってきていますし、潤沢なリソースを持つチームではATやMFをさらに細かく特性ごとに分けてグループ分けしているところもあるようです。
このように、新たなポジションや役割が生まれてその名前が付けられるというのは、そのスポーツが進化していることを表す指標ではないでしょうか。
そういう意味ではまさにラクロス戦術は進化の真っ最中と言ってもいいでしょう。
サッカー戦術の進化
突然ですが、ここからはスポーツを変えて「サッカーの戦術」について考えてみます。
実は僕は中学までサッカー部でした。
(ちなみに高校では野球をやっていました。なのでサッカーも野球もそれなりに語れます)
サッカーの戦術の進化(変化)で最も大きなことと言えば、
トータルフットボール
が生み出されたことだと思います。
トータルフットボールとは簡単に言うと、「ポジションにとらわれない全員攻撃・全員守備」という戦術です。現代のサッカー戦術のほとんど全てはこのトータルフットボールの派生と言われています。
ちなみにこのトータルフットボールは1974年のW杯でオランダ代表が展開したと言われており、その中心にいたのがヨハン・クライフです。クライフは「クライフターン」という足技でも有名な伝説の選手ですが、指導者としても後世に大きな影響を与えたサッカー界の偉人です。
このトータルフットボール、実際に「トータルフットボール」で検索すると、「全員攻撃・全員守備」というのがピックアップされがちですが、実は
「ポジションが流動的」
「ポジションにとらわれない」
ということが最も重要です。
これをわかりやすく説明するために、このトータルフットボールが現代でどういうプレーを生んでいるかを説明します。
↓↓↓
長友選手を例に挙げます。
サッカーに詳しくない人でも、長友選手のことはなんとなくわかるのではないでしょうか。
彼のポジションはSB(サイドバック)です。
では彼の最も印象的なプレーは何でしょうか?
おそらく、ほとんどすべての人が
サイドを駆け上がってセンタリングを上げる
シーンを思い出すと思います。
これ、実はトータルフットボールが生み出される前はタブーともいえるプレーでした。
なぜなら長友選手のSB(サイドバック)というポジションは「DFのポジション」だからです。「DFはDFの仕事をしろ」「フォーメーションを崩すな」というのがトータルフットボール以前の考え方だったのです。
それを踏まえて今のサッカーを見ると、DFの選手はどんどん前に上がってくるし、FWの選手も守備でガンガン走り回るし、ポジションなんてあってないようなものに見えます。現代サッカーでは「DFの選手も足元の技術がないとやっていけない」なんてのはもはや常識です。
このポジションにとらわれない動きこそがまさにトータルフットボール革命です。
ラクロスに当てはめてみる
このサッカー戦術の進化をラクロス戦術と比較してみると、なんだかラクロスの戦術はトータルフットボール以前の「ポジション重視」スタイルに似ているような気がします。
つまり、DFはDF、OFはOFと「ポジションごとの役割を明確にし、その仕事をまっとうする」スタイルであるということです。
とは言え、最近はDFのロング選手がシュートを打ちに行くシーンは増えています。が、やはり「DFはDF」という考え方が根深いのか、ロング選手がゴールした時の盛り上がりは大きめです。DFが決めただけで、同じ1点だピョン…なんですけどね。
さらに言うと、クリア後にそのままロングがオフェンス参加するシーンがあると思いますが、特に何をするわけでもなくとりあえず1回カットインを仕掛けて結局何も事を起こせずフライ~なんていうのもよく見られると思います。
これもまさに「ポジションにとらわれている」典型です。
正直僕の感覚では、ロング選手がたまに上がってちょっとだけオフェンス参加するのは、サッカーで言うところの「コーナーキックのときに背が高いからヘディング要因でなんとなく前線に来ました(テヘッ)」に近いです。なのでなんか好きになれません。
やるならもっとガチガチにオフェンスするロングが見てみたいです。
・・・と、ここまでの説明だと、
「はいはい、ロングももっとオフェンス参加したほうがいい的なチープな話ね」
と思われるかもしれませんが、ここからもっと考察を深めていきたいと思います。
ラクロス戦術の進化は今どのくらい?
そもそもサッカーとラクロスを一緒にするなという議論は一旦置いといて…もし、サッカー戦術の進化とラクロス戦術の進化を同じものとするなら、今のラクロス戦術はどのくらいのレベルでしょうか?
ポジションごとの役割を徐々に超えつつあることを考えれば、今のラクロス戦術は「トータルフットボール誕生初期」くらいの戦術かもしれません。となると、トータルフットボール誕生が1970年代の話なので、ラクロスはまだ白黒テレビがカラーテレビになったくらいの発展です。(だんだん例えが雑になってきましたw)
色々考え過ぎかもしれませんが、このように考えると僕はラクロスはもっともっと進化する可能性があると思ってしまうのです。先ほどDF選手のオフェンス参加について書きましたが、そんな議論をすること自体がダサいと思うくらいの変化が起こるはずです。サッカーでは「DF=守備」という考えはすでにないので。
ちなみにコーチとしてラクロスを客観的に見ていると、こういう妄想に走ってしまうのは日常茶飯事で、そうなるとワクワクして周りが見えなくなります。
そして奥さんの話しも無視します。
するとキレた奥さんに愛犬の散歩とトイレ掃除を命ぜられます。
そして散歩したりトイレにこもったりしてまた妄想します。
これが意外といい発見を生んだりします。
少し脱線しました。。
話を戻すと、僕はこの妄想がとても大事だと思っています。
なぜなら、サッカー戦術の進化は、ほとんどすべてが指導者である監督達のひらめきから生み出されているからです。選手が戦術を生み出すようなことはまずありません。だからこそ、ラクロス戦術の進化も僕たち指導者のひらめきが重要だと思うのです。
今のラクロス戦術をとことん疑ってみる
ひらめきのタネを見つけるためには、まずは今のラクロス戦術やルールに関して当たり前となっていることを疑ってみるのが良いかもしれません。
以下テキトーにタネになりそうなネタを羅列していきます。
ゴーリーだってクリース外でもっとプレーしたっていいはず。7人のDFと考えたらOFより人数多いのだから。
そもそもフライってしなきゃダメなのか?フライしないことで生まれるチャンスって結構ないか?
結局上手くて強い選手の個人技頼みになってないか?本当に6人でオフェンスしているか?オフェンス2,3人で頑張ってないか?
ルールブックでは「クロスは全長が、101.6〜106.68㎝(ショートクロス)または132.08〜182.88㎝(ロングクロス)でなければならない。チームは試合の中のいかなるライブボールのときにも、ゴーリー用のクロスを除いて4本より多くのロングクロスを使用することはできない。」となっている。実はロングの長さ基準って広い。約132cmのロングってどんなメリットがあるだろうか?なぜ4人までしかロングは入れないのか?ルールで縛らなければいけないほどのメリットがロングにはあるのか?
・・・などなど
ざっと思いついたものを並べてみました。
新たな発見はあったでしょうか?
これがきっかけで自分以外の誰かがすごい戦術を生み出したらめっちゃ悔しいです 笑
ラクロス戦術の次なる進化
ここからは僕の予想であり実現したいことです。
サッカー戦術の進化の歴史を考えるならば、ラクロス戦術は今後もっともっと進化していくはずです。その戦術は、出会い系アプリのようなオフェンス戦術や動物・ゲームのようなDFシステムといったものではなく、そもそものラクロスのゲームの進め方を変えてしまうような根本的戦術です。
ちなみに岩手大学はその「根本的戦術転換」の可能性を今年から実践していきます。
その可能性のいくつかを抽象的にキーワードで表現すると、
- No.6の可能性
- ノーフライ
- 数的不利オフェンス
- 反ポゼッションラクロス
- Gプレス
※「No.6」「Gプレス」というのは僕の造語です。岩手大学のメンバー&OB以外には伝えていません。
となります。
これらのどれかがラクロス界に衝撃を与えるようなものになれば僕としても嬉しいです。
以上です。
最後はなんだか煮え切らない感じになってしまいましたが、これ以上書くとこれからやろうとしている戦術を公開して自分の首を締めるだけなのでこの辺でやめたいと思います。
いずれにしても今年は「All-Out Attack」のスローガンのもと、これらの可能性を試合で実現すべく挑戦していくシーズンになりそうです。
もし、これらの挑戦でうまくいったものがあったらまたこの場で紹介していきたいと思います。